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新規投稿終了のお知らせ

 投稿者:博物館スタッフ  投稿日:2021年 3月31日(水)13時30分33秒
  本日2021年3月31日をもって河本学芸員退職のため、
本掲示板に書かれた質問に対する回答の書き込みを
終了することとなりました。
この掲示板自体は当面閲覧可能な状態にしておきますが、
新たな投稿はできなくなります。

今後、質問がおありの方は、
博物館のお問合せフォーム
にお送りいただければ、
個別に対応させていただきます。

どうぞよろしくお願いいたします。

https://mtl-muse.com/

 
 

活断層のずれによるトンネルの食い違い

 投稿者:河本  投稿日:2021年 3月 2日(火)19時10分7秒
  1.活断層とは「最近の時代にくりかえしずれ動き、近い将来にもずれ動いて地震を発生する断層」と定義されています。
 断層がずれ動くことで地震が発生するのですから「地震を発生する断層」は余分な気がしますが、地滑りなどによる地面のずれと区別するためでしょうか。
 ここで「最近の時代」とはいつからでしょうか。逆に「最近ではない時代にずれ動いた断層」とは「過去の(現在は終了した)地殻変動によってずれ動き、最近の(現在進行中の)地殻変動の時代にはずれ動かなくなった断層」ということになります。今の日本列島の山地の隆起や盆地の沈降を起こしている地殻変動が始まったのは、おおむね250万年前です。ただし250万年間でも変動の様子は少しづつ変わっていきますから、最近の数10万年間はずれ動きを生じていないとすれば、「活断層ではなくなった」と言えるかもしれません。

2,活断層と言っても、いつもズルズル動いているわけではありません。ひずみが少しづつ溜まっていき、耐えられなくなって一気に動きます。
 ところで地震の規模(エネルギー)は、ずれ動いた断層の面積やずれ動いた量に比例します。いわゆる内陸直下型という日本列島の地殻で発生する地震の場合、その震源の深さは10㎞程度です。地震の規模を表すマグニチュードが6.0の場合、震源断層の面積は5㎞四方程度ですから、よほど震源が浅い場合でなければ断層面の食い違いは地表には達しません。マグニチュードが7.0の場合、震源断層の面積は20㎞四方以上になるので、その一部が地表に達し、地面の食い違いが生じます。

 活断層を「発見」できるのは、過去に地表に生じた食い違いが残っているからです。したがってその食い違いの痕跡は、そこでマグニチュード7程度かそれ以上の地震が生じたときの痕跡ということになります。
 活断層が繰り返しずれ動いた間隔というのも、地表の食い違いが繰り返し生じた間隔ということですから、マグニチュード7程度かそれ以上の地震が生じた間隔ということになります。その間隔は活断層により異なり、数百年~数万年です。

3,活断層の活動度は、過去のずれ動きの蓄積によって地形が食い違っている量で表します。ふつうは1000年あたりに割った食い違い量で表しますが、1000年間隔でずれ動くというわけではありません。例えば1万年おきに1mずれる活断層ならば、1000年あたりの食い違い量は10㎝になります。
 この1000年あたりの累積食い違い量が1m~10mの場合A級、10㎝~1mの場合B級、1㎝~10㎝の場合C級に、活断層の活動度を区分しています。

4,九州~沖縄を除き、現在の日本列島の地殻には主に東西方向に圧縮する力による短縮変形が生じています。およそ30㎞ほどの厚さの地殻の上半分、厚さ15㎞ていどの上部地殻は、低温で固いため大きくゆっくりと変形することができません。そのため多数の変動地塊(ブロック)に分かれ、それぞれの変動地塊の境界で、一方が他方に押しかぶさったり、互いに横ずれに食い違ったりしていきます。

 したがって、変動地塊どうしの境界に活動度が高い活断層が分布します。変動地塊の内部にも活断層が生じている場合がありますが、地塊の内部の活断層の活動度は低いのがふつうです。

5,南アルプスの変動地塊は、諏訪湖を頂点とし冨士川と天竜川を2辺とする三角形の地塊で西へ傾きながら上昇しているので「赤石傾動地塊」と呼ばれます。
 東縁を限るのはA~B級の糸魚川‐静岡構造線(活)断層帯で、赤石地塊が甲府盆地側に押しかぶさるように上昇しています。
 西縁を限るのはA~B級の伊那谷断層帯で、こちらでは木曽山脈(中央アルプス)の地塊が赤石地塊に押しかぶさっています。
 赤石地塊の内部にある大きな古傷の中央構造線も活断層として再活動していますが、活動度はB~C級です。

6,リニア新幹線と活断層の関係を考えるときには、変動地塊の境界であるA~B級活断層にもっと注目すべきと思います。もちろんC級活断層でも、ひずみが十分にたまってずれ動く時期に達していたら、周囲のA級活断層より先に動きます。
 しかし赤石地塊内部の中央構造線に注目が行き過ぎて、赤石地塊の境界の糸魚川‐静岡構造線(活)断層帯や伊那谷断層帯に注意が向いていないのではないかと感じています。

 リニア新幹線は甲府盆地から赤石山地東部の巨摩山地に入るトンネルの入り口付近で糸魚川‐静岡構造線(活)断層帯を横断します。
 また、天竜川西岸の長野県駅のすぐ西方の中央アルプスに入るトンネルの入り口付近で、伊那谷断層帯の複数の活断層を横断します。
 さらに甲府盆地の南東側では、御坂山地の地塊が甲府盆地に押しかぶさる曽根丘陵断層にほぼ沿っています。

 伊那谷断層帯、糸魚川‐静岡構造線(活)断層帯、曽根丘陵断層のおおまかな位置については下記の政府地震調査研究推進本部のページをごらんください。
https://www.jishin.go.jp/evaluation/long_term_evaluation/major_active_fault/

7,活断層のずれ動きにより生じたトンネルの損傷については、1930年の東海道本線丹那トンネル(建設中)の例がよく知られています。1930年の丹那断層のずれ動きにより北伊豆地震が発生しましたが、震源断層のずれは地表まで達し、地表に知られていた丹那断層に新たな食い違いが生じました。
 それにより地下160mで丹那断層を横断して建設されていたトンネルには2.4mの食い違いが生じました。まだ建設中で列車が通っていなかったのは幸運だったとされています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjseg1960/39/6/39_6_540/_pdf

8,今のところ、鉄道や道路を活断層を横断して建設することを規制するきまりはありません。
 高速鉄道の場合は、強い揺れに対しては工学的にできるだけ対処し、食い違いに対しては地震の揺れを検知すると同時に急停車させるシステムによって食い違いが生じた場所に列車がさしかかる確率をできるだけ下げることで対処しようとしています。鉄道工学では、活断層を横断する部分のトンネルの幅を予想される食い違い量の分まで広げ、断層のずれ動きによって列車の前方に生じた岩壁への激突を避けるようにする研究も行われていますが、実際に食い違いが生じる場所をごく狭い範囲で予測することが困難で、おそらく幅広いトンネルを長区間建設することの技術的・環境的・工費的困難から採用例はありません。

9,理学的には活断層は将来必ずずれ動くものであり、リニア新幹線の供用期間中に食い違いが生じる確率もゼロではないことを想定できます。
しかし万一、走行中の列車が活断層のずれて食い違った部分に500㎞で激突すれば乗客の全員死亡は免れないでしょう。しかし揺れを感知して緊急停止するシステムなどに不備が無ければ鉄道会社の責任は問われないでしょう。巻き込まれた乗客は「不運」とされるのではないでしょうか。

10,私自身はリニア新幹線は不要と考えています。地球の資源・環境に限界が生じる中で、人類が持続するためにはスローダウンと資源の公平な分配が必要です。リニア新幹線はそれに逆行するものと思います。
 

ありがとうございました

 投稿者:尾城徹雄  投稿日:2021年 3月 2日(火)16時51分48秒
  お忙しいところ、詳細な解説ありがとうございました。

私の推理が外れて残念です。しかし、答えがわかって、良かったです。

確かに10の外部資料の通り、内地では塩が貴重で、そのために長野や山梨の「塩」の付く地名が多いというだけだったのかもしれません。

ぜひ、中央構造線博物館に行きたいです。しかし、道はあまりに遠い…。

祖谷渓、熊野、大鹿、その構造的な理由で、中央構造線上の特徴的な場所は行きにくいところばかりですね。
 

塩のつく地名と塩泉の起源

 投稿者:河本  投稿日:2021年 3月 2日(火)15時21分33秒
編集済
  1,「塩」のつく地名について。ひとつは塩の輸送路(塩の道)に由来するもの。もうひとつは、その場所で食塩分を含む温泉(冷温泉を含む)が湧出していることに由来するものが考えられます。前者の例として塩尻(塩の道の終点)が挙げられます。大鹿の鹿塩温泉(かしお)は後者の例です。

2.食塩分を含む温泉または冷泉の起源として、①海水そのものが温められて湧出しているもの(熱海・指宿など)。②千数百万年前~数百万年前(新第三紀)に海底に堆積した地層の粒間に含まれた古海水が湧出しているもの(津軽湯ノ沢など)。③マグマに溶け込んでいた水(マグマ水)が分離して湧出しているもの(箱根の一部など)。④火山帯ではないが3と似た性質をもつもの(有馬・鹿塩など)が考えられています。

3,温泉水にはさまざまな成分が溶け込んでいます。地下深部から地表へ上昇してくる間にさまざまの深さで物質が出入りします。地表または地下浅部で含まれている成分と、地下深部でもともと含んでいた成分が同じとは限りません。
 食塩(塩化ナトリウム)は溶液中ではナトリウムイオン(Na+)と塩化物イオン(Cl-)として存在します。ナトリウムイオンと塩化物イオンのそれぞれについて、起源を考える必要があります。また、もともと含まれていたけれども、地表へ上昇する過程で失われた成分もあるはずです。たとえば鹿塩温泉では、有馬温泉では多量に含まれているカルシウムイオンが失われています。

4,食塩泉の2の区分は、3の理由から、その成分ではなく、水(H2O)そのものの解析に基づいています。その方法は安定同位体比解析という、水素原子(H)の中の微量に存在する重い原子核を持つ重水素の割合と、酸素原子(O)の中に微量に存在する重い原子核を持つ重酸素の割合を調べることに依っています。
 この水素と酸素の安定同位体比が、①海水のH2O、②地層中に長期間閉じ込められた古海水のH2O、③マグマに含まれる水のH2Oでそれぞれ異なることが分かっています。④の有馬・鹿塩型のH2Oもマグマ水と同じ安定同位体比を持っています。

5,多量(数%)の水を含むマグマは、アンデス山脈や日本列島のような海洋プレートが沈み込んでいる沈み込み帯の火山帯のマグマの特徴です。ここでいうマグマ水は、正確には沈み込み帯の火山帯のマグマに含まれている水です。
 冷たく冷えた海洋プレートが沈み込んでいる沈み込み帯でマグマが発生するのは不思議ですが、沈み込む海洋プレートに含まれる水が関わっていると考えられています。
 海洋プレートの表層の地殻には、中央海嶺や火山島で海底に湧き出した溶岩が熱いうちに海水のH2Oと反応した水を含む火山岩が含まれています。また移動中の大洋底や沈み込み口の海溝に堆積した堆積物も水を含んでいます。沈み込む海洋プレートは沈み込みに伴って下方へ曲げられるため割れ目ができ、そこに海水が染み込むことも考えられています。
 沈み込みに伴い隙間にあった水は絞り出されて失われますが、鉱物に水酸基(‐OH)として結合した水は、地球内部へ運び込まれます。その一部は、沈み込まれるプレートの下のマントルに放出されます。深さ100㎞以深では沈み込まれるプレートの下のマントルの温度は約1400℃です。その深さでは高圧なほど岩石は融けにくくなるため、1400℃ではマントルは融けません。しかし海洋プレートから放出される水を受け取ると、岩石は少し融けやすくなるため、その一部が溶けてマグマが発生します。それが上昇して火山帯を造ります。沈み込んだ海洋プレートがまだ100㎞に達していない海溝と火山帯のあいだでは、地下の温度が十分に高くないので水が放出されてもマグマが生じません。

5,南海トラフと琉球海溝から沈み込んだフィリピン海プレートが深さ100㎞に達するのは山陰地方から九州中央部にかけてです。そこで生じたマグマが上昇して白山‐大山火山帯と阿蘇‐霧島火山帯を造っています。六甲や鹿塩の温泉水がマグマ水と同じ安定同位体比を持っているのは、フィリピン海プレートから放出された水が白山‐大山火山帯を造る深さに達する場所より海溝側から、マグマを造ることなく上昇したものと考えられています。
 一方、浅間山‐八ヶ岳‐富士山‐箱根‐伊豆七島にかけての富士火山帯の下では、太平洋プレートの深さは100㎞~150㎞に達しています。乗鞍火山帯の下では約250㎞下に太平洋プレートがあります。これらの火山帯は太平洋プレートから放出された水が造っています。

6,マグマ水に含まれるナトリウムイオンや塩化物イオンの起源はまだ分かっていません。定説になってはいませんが、私は塩化物イオンについては、海洋プレート上の溶岩の鉱物中に存在する微小な液胞からわずかに塩素が検出されることから、海洋プレート上に溶岩が
湧き出した時に取り込まれた海水起源の塩化物イオンの可能性があると考えています。

7,長野県の場合、中央を南北に通る糸魚川‐静岡構造線の東側は「北部フォッサマグナ」地域といい、新第三紀の2000万年前~数100万年前の海底に堆積した地層が山の上まで分布しています。
 「北部フォッサマグナ」は2000万年前から1500万年前にかけて、アジア大陸の東縁が割れて大陸から離れるように移動して日本列島になった(日本海の拡大)時に大きく沈降した地域の一部です。その変動時に沈降してできた海に堆積した地層や、変動後も残った海に堆積した地層に覆われています。しかし、長野県内の北部フォッサマグナ地域では、最後まで海が残ったところでも約500万年前には埋積され終わっています。これは現在の山地や盆地を造っている地殻変動が始まった約250万年より前のことです。
 一方、糸魚川‐静岡構造線の西側の北アルプス・中央アルプス・南アルプスを含む側は、アジア大陸だった時代に形成された古い岩石が露出しています。糸魚川‐静岡構造線の東側の「北部フォッサマグナ」地域のような大規模な沈降は無かったと考えられています。
 それでも1800万年前ごろの海底に堆積した地層が、守屋山・富草・和田地域に点在しています。日本海の拡大時には、こちら側の一部も水没して地層が堆積したことは確かです。

8,長野県内の塩泉には、日本海拡大時の海底堆積物中に含まれる古海水起源のものと、現在の火山帯のマグマ水起源のものがあるはずです。そのほか、稀ですが鹿塩温泉のような沈み込んだフィリピン海プレートから放出された水が火山帯を造らずに地表に達したものもあります。
 長野市の松代温泉は、高いカルシウムイオン濃度とともに高濃度のナトリウムイオンと塩化物イオンを含む食塩泉ですが、その起源をめぐっては古海水説とマグマ水説に分かれています。

9,このように「塩」がつく地名にも、「塩の道」に関わるものと「塩泉」に関わるものがあります。
 また塩泉にも、日本海拡大時の北部フォッサマグナを形成した変動で生じた海に堆積した地層を起源とする古海水と、現在の火山帯のマグマ水があります。
 古海水起源の塩泉の場合、その古海水を含む堆積物が堆積した海は、現在の地殻変動が始まるよりも数100万年前には失われていますので、現在の山地が隆起する直前に海域が広がっていた姿をイメージすることはできません。

10、最後に、H2Oの安定同位体解析のデータが含まれていない資料ですが、リンクを添付します。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/chitoka/25/0/25_KJ00005483114/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/chitoka/26/0/26_KJ00005483136/_pdf/-char/ja
 

将来の災害の展示

 投稿者:尾城徹雄  投稿日:2021年 2月28日(日)07時16分3秒
  中央リニア新幹線の南アルプストンネルが、断層によって圧壊するのは、100年後か500年後かわかりませんけれども、時間の問題でしかないと思います。

広島の原爆資料館など、これまでの資料館や記念館は、過去の災害をジオラマのような形で展示していました。

将来、リニア中央新幹線でトンネル事故が起きた時に、事故現場はどのような状態になるのか。

中央構造線博物館では、将来、起こりうる災害の展示をしたら、衝撃的であり、良い啓発活動につながると思います。
 

南アルプスの塩

 投稿者:尾城徹雄  投稿日:2021年 2月28日(日)07時07分58秒
  南アルプスの南西部にある長野県には、塩川、鹿塩、塩見岳などの地名があります。その南側には青木川。

一方、南アルプスの北東部の山梨県には、塩川、塩崎、塩ノ山などの地名があります。その南側には青木ヶ原。

素人なりに推理をすると、この一帯に、湾の海水が取り残されてできた塩湖があったのだと思います。中の人は同じ。その形からして、犯人は富士山の隆起。

もし、南アルプスの北岳にも、この一帯と同じような塩分が多い地層があれば、北岳は塩湖が干上がった後に盛り上がったもの、なければ、塩湖は北岳で分断されたことと推察できそうです。

地下深くの塩が地下水で湧き出しているのではなくて、地表付近で塩が取れる土地が広範囲にあるとすれば、それは近年になって、この辺の土地が一気に盛り上がったことになりそうです。

塩ノ山の資料を探しても、ほとんどが「四方から見えるから塩ノ山」となっていて、「昔は塩が取れたらしい」という解説は多くはありません。

ただ、昔は内地での塩は、金山銀山以上に貴重なはず。これだけ、「塩」が付く地名が点在しているのだから、きっと塩が取れていたのでしょう。「青木」という地名と対比になっているのも、それを裏付けます。

山梨と長野の塩の分布について、何か、資料はありますか。
 

力の向きと断層面の向き・傾きの関係

 投稿者:河本  投稿日:2020年 4月13日(月)14時41分54秒
編集済
  戸嶋さま

 いろいろな現象を理解するときには、時間と空間のスケールの階層化が必要です。現実は、長いサイクルで大きな空間スケールで起こる現象をベースに、短いサイクルで小さなスケールで起こる現象が重なっていますから、これらを整理して理解しましょう。他方では、長期間大スケールで造られる構造と、短期間小スケールで造られる構造が相似形で入れ子状態(フラクタル)になっているように見えて、類推と想像力で時空間を超えられるところが面白いですね。

 まず断層の基本的なでき方について。

 無傷で均質な岩石のブロックを考えてみます。

 大陸地殻の中に生じる断層では約15km~20kmから下では、地温が高いので岩石は変成作用(鉱物の再結晶)を伴いながらゆっくりと変形しマイロナイトという断層岩をつくるので、ここの話では除外し、一気にずれ動いて地震を発生する15kmより浅い領域に限ります。

 地表面を除き、地中では高い岩圧がかかっていますから、空隙を生じるような破壊は起きません。体積が一定な条件で起きる変形は、ずれる変形(剪断変形)になります。そのずれ動いた面が断層面(剪断面)です。

 地下の岩石にかかる力がどの方向からも同じなら断層は生じません。地下の岩石にかかる力が不均一な場合、その状態は、最大の力(最大圧縮応力)がかかる方向と、最小の力(最小圧縮応力)がかかる方向、それらに直交する中間圧縮応力の方向の直交する3方向に分けて考えることができます。

 無傷で均質なブロックでは、もし摩擦が無ければ断層面(剪断面)は最大圧縮応力と最小圧縮応力の向きに対して45度で中間圧縮応力に平行に生じます。じっさいは摩擦が働くので、最大圧縮応力の向きに対して30度程度の角度に生じます。

 次のリンクのp30の1-22~1-29項をごらんください。
 この資料は私が2002年ごろに浜岡原子力発電所の問題を考えるために作った資料で、別の場所に引用されているものです。ただしこの項で「中間圧縮応力軸に直交」と書いてあるのは「平行」の誤りであることに今、気づきました。

 なおこの時点では東北日本が現在(第四紀)には北アメリカ(オホーツク)プレートに帰属するようになったという見方で書きましたが、その後の東北日本の内陸や能登半島沖地震の解析から、その考えは再考されつつあります。また、プレート境界型地震の震源断層面の深い側の境界は、沈み込む海洋プレートの海洋地殻から水が放出され始める深さと関係していることが明らかになっています。
http://no-genpatsu.main.jp/download/genkokujunbishomen26word.pdf

 1-22図のように、最大圧縮応力軸(最大圧縮応力の方向)に斜交する断層面は2方向にできます。岩石の破壊実験ではじっさいにそのように断層が生じます。地殻に生じる断層では、2方向の断層群が絡み合うように見られる(共役断層)こともありますが、地殻は無垢ではなく地質の方向性や古傷がありますからどちらかの方向が卓越して現れる場合が多いです。

 1-29図をごらんください。

 最大圧縮応力軸(最大圧縮応力の方向)が水平で、最小圧縮応力軸が垂直の場合、逆断層が生じ、断層面の傾斜は最大圧縮応力軸に30度程度で斜交するので低角(水平に近い)になります。

 最大圧縮応力軸(最大圧縮応力の方向)が水平で、最小圧縮応力軸も水平の場合、横ずれ断層が生じ、断層面の走向は最大圧縮応力軸に30度程度で斜交し、断層面の傾斜は垂直になります。

 最大圧縮応力軸(最大圧縮応力の方向)が垂直(重力の方向)で、最小圧縮応力軸が水平(岩圧マイナス引っ張り)の場合、正断層が生じ、断層面の傾斜は重力軸に30度程度で斜交するので高角(垂直に近い)になります。

 これらの図は、断層の面積に対して、食い違い量を強調して書いてありますのでイメージしにくいのですが、断層面の深さ方向の規模は15km程度に対し、食い違い量は数メートルです。十数kmの幅の断層面ならば、傾斜角がわずかに異なるだけで、地表に現れるずれ目(地表地震断層)の位置が大きく異なるのはたやすく想像できると思います。

 日本列島の地殻にかかる応力の方向や大きさは、数十万年~数百万年の時間スケールでは大きく異なっていきます。ですから古くからある断層では、動いた時代もあるし止まっていた時代もあります。動き方も時代により異なります。動き方が変われば、地表に現れる位置も異なるでしょう。

 さらに現在の変動の時代にずれ動きを繰り返している活断層は、同じ応力場ですから基本的には同じ動きを繰り返してきた筈です。しかし、数千年おきに地表にまで達するずれが生じ、それを数十万年間くりかえしてきたとすると、100回以上食い違いが出現したことになります。千年おきに百万年間なら1000回です。大局的には同じ地帯としても100~1000回もまったく同じ位置にずれ目が現れるというのは考えにくいですね。

 諏訪地域の糸魚川‐静岡構造線は、新第三紀に正断層として誕生したはずです。そもそもその新第三紀のオリジナルの断層(フォッサマグナを埋めた新第三紀の海成層の西縁の地質境界としての糸魚川‐静岡構造線の位置は、諏訪地域では第四紀の火山噴出物や諏訪盆地の堆積物に覆われているために分かっていません。諏訪地域の糸魚川‐静岡構造線の古傷は、現在は左横ずれの活断層として再活動していますが、その位置は、とりあえずは地質境界としての糸魚川‐静岡構造線の位置との関係を関連付けないで見た方が良いと思います。

 なお横ずれ断層でも、右横ずれと左横ずれでは大小のスケールで副次的な構造が異なります。断層の浅部では小断層が大局的なずれ方向に斜交して配列(雁行配列)します。その並び方が断層の走向方向に見たときに左横ずれではカタカナの「ミ型」、右横ずれでは漢字の杉の字のつくりの「杉型」に配列します(添付図)。

 これは露頭スケールでも地形のスケールでも観察できます。諏訪地域の糸魚川‐静岡構造線活断層帯(活断層としての糸魚川‐静岡構造線)は、東西圧縮を受けて左横ずれにずれていますが、添付図でプレッシャーリッジと書いてあるのは、その副次的な構造で押し上げられてできる小規模な丘の地形(断層変位丘陵)です。
 茅野市金沢~富士見町では、これが顕著に見られ、中央東線付近と南アルプス山麓付近にある2本の平行な主断層の間に、北西‐南東方向に多数の断層変位丘陵が並んでいます。

 富士見町で断層変位丘陵が顕著なのは、もとの糸魚川‐静岡構造線の屈曲により、左横ずれによる圧縮場になっているからです。諏訪盆地が引っ張りによる沈降盆地(プルアパート盆地)になっているのと対照的です。

 次のリンクをご覧ください。
http://jgs-chubu.org/wp-content/uploads/2018/07/s2911.pdf

 「リーデル剪断帯」というのが、主断層の方向に雁行する小断層群のことです。

 図3の「横ずれ断層のジョグ」というのが、もとの断層の屈曲のことで、図3の奥の Pull-apart basin が諏訪盆地、手前の Contractional duplex が富士見の雁行変位丘陵群にあたります。
 

RE:トランス・サイエンス展示アンケート報告書の送付について

 投稿者:博物館スタッフ  投稿日:2020年 4月11日(土)12時36分17秒
  小笠原様
大変お手数ですが、博物館ホームぺージの「問い合わせ」の方に、連絡いただけますか?文書添付可能なアドレスをお知らせします。
https://mtl-muse.com/contact/

https://mtl-muse.com/

 

中央構造線の断層面について

 投稿者:戸嶋 清房  投稿日:2020年 4月 9日(木)09時10分50秒
  私は、長野県内の中央構造線の露頭を見て回ったのですが、御教授頂きたいことがあります。日本列島で中央構造線の南側はイザナギプレートの北上に引きずられる形、左横ズレによって形成されたとされています。しかし、現在は右横ズレに変わっています。露頭をみますと、糸静構造線(左横ズレ)よりも複雑に観えます。安康露頭は多層になっており、溝口露頭にはマグマの貫入痕もあります。このような複雑さは、同じ断層面を左横ズレや右横ズレで動いたことに起因するのでしょうか?宜しくお願いします。
 

トランス・サイエンス展示アンケート報告書の送付について

 投稿者:小笠原喜康  投稿日:2020年 3月29日(日)06時34分22秒
  日本大学文理学部の小笠原喜康と申します。
昨年度お願いしたトランスサイエンス展示の報告書をメール添付にてお送りしたいのですが、うまくお送りすることができませんでした。
もし可能でしたら、文書添付可能なアドレスをお教えいただけないでしょうか。
よろしくお願いいたします。
 

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