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力の向きと断層面の向き・傾きの関係

 投稿者:河本  投稿日:2020年 4月13日(月)14時41分54秒
編集済
  戸嶋さま

 いろいろな現象を理解するときには、時間と空間のスケールの階層化が必要です。現実は、長いサイクルで大きな空間スケールで起こる現象をベースに、短いサイクルで小さなスケールで起こる現象が重なっていますから、これらを整理して理解しましょう。他方では、長期間大スケールで造られる構造と、短期間小スケールで造られる構造が相似形で入れ子状態(フラクタル)になっているように見えて、類推と想像力で時空間を超えられるところが面白いですね。

 まず断層の基本的なでき方について。

 無傷で均質な岩石のブロックを考えてみます。

 大陸地殻の中に生じる断層では約15km~20kmから下では、地温が高いので岩石は変成作用(鉱物の再結晶)を伴いながらゆっくりと変形しマイロナイトという断層岩をつくるので、ここの話では除外し、一気にずれ動いて地震を発生する15kmより浅い領域に限ります。

 地表面を除き、地中では高い岩圧がかかっていますから、空隙を生じるような破壊は起きません。体積が一定な条件で起きる変形は、ずれる変形(剪断変形)になります。そのずれ動いた面が断層面(剪断面)です。

 地下の岩石にかかる力がどの方向からも同じなら断層は生じません。地下の岩石にかかる力が不均一な場合、その状態は、最大の力(最大圧縮応力)がかかる方向と、最小の力(最小圧縮応力)がかかる方向、それらに直交する中間圧縮応力の方向の直交する3方向に分けて考えることができます。

 無傷で均質なブロックでは、もし摩擦が無ければ断層面(剪断面)は最大圧縮応力と最小圧縮応力の向きに対して45度で中間圧縮応力に平行に生じます。じっさいは摩擦が働くので、最大圧縮応力の向きに対して30度程度の角度に生じます。

 次のリンクのp30の1-22~1-29項をごらんください。
 この資料は私が2002年ごろに浜岡原子力発電所の問題を考えるために作った資料で、別の場所に引用されているものです。ただしこの項で「中間圧縮応力軸に直交」と書いてあるのは「平行」の誤りであることに今、気づきました。

 なおこの時点では東北日本が現在(第四紀)には北アメリカ(オホーツク)プレートに帰属するようになったという見方で書きましたが、その後の東北日本の内陸や能登半島沖地震の解析から、その考えは再考されつつあります。また、プレート境界型地震の震源断層面の深い側の境界は、沈み込む海洋プレートの海洋地殻から水が放出され始める深さと関係していることが明らかになっています。
http://no-genpatsu.main.jp/download/genkokujunbishomen26word.pdf

 1-22図のように、最大圧縮応力軸(最大圧縮応力の方向)に斜交する断層面は2方向にできます。岩石の破壊実験ではじっさいにそのように断層が生じます。地殻に生じる断層では、2方向の断層群が絡み合うように見られる(共役断層)こともありますが、地殻は無垢ではなく地質の方向性や古傷がありますからどちらかの方向が卓越して現れる場合が多いです。

 1-29図をごらんください。

 最大圧縮応力軸(最大圧縮応力の方向)が水平で、最小圧縮応力軸が垂直の場合、逆断層が生じ、断層面の傾斜は最大圧縮応力軸に30度程度で斜交するので低角(水平に近い)になります。

 最大圧縮応力軸(最大圧縮応力の方向)が水平で、最小圧縮応力軸も水平の場合、横ずれ断層が生じ、断層面の走向は最大圧縮応力軸に30度程度で斜交し、断層面の傾斜は垂直になります。

 最大圧縮応力軸(最大圧縮応力の方向)が垂直(重力の方向)で、最小圧縮応力軸が水平(岩圧マイナス引っ張り)の場合、正断層が生じ、断層面の傾斜は重力軸に30度程度で斜交するので高角(垂直に近い)になります。

 これらの図は、断層の面積に対して、食い違い量を強調して書いてありますのでイメージしにくいのですが、断層面の深さ方向の規模は15km程度に対し、食い違い量は数メートルです。十数kmの幅の断層面ならば、傾斜角がわずかに異なるだけで、地表に現れるずれ目(地表地震断層)の位置が大きく異なるのはたやすく想像できると思います。

 日本列島の地殻にかかる応力の方向や大きさは、数十万年~数百万年の時間スケールでは大きく異なっていきます。ですから古くからある断層では、動いた時代もあるし止まっていた時代もあります。動き方も時代により異なります。動き方が変われば、地表に現れる位置も異なるでしょう。

 さらに現在の変動の時代にずれ動きを繰り返している活断層は、同じ応力場ですから基本的には同じ動きを繰り返してきた筈です。しかし、数千年おきに地表にまで達するずれが生じ、それを数十万年間くりかえしてきたとすると、100回以上食い違いが出現したことになります。千年おきに百万年間なら1000回です。大局的には同じ地帯としても100~1000回もまったく同じ位置にずれ目が現れるというのは考えにくいですね。

 諏訪地域の糸魚川‐静岡構造線は、新第三紀に正断層として誕生したはずです。そもそもその新第三紀のオリジナルの断層(フォッサマグナを埋めた新第三紀の海成層の西縁の地質境界としての糸魚川‐静岡構造線の位置は、諏訪地域では第四紀の火山噴出物や諏訪盆地の堆積物に覆われているために分かっていません。諏訪地域の糸魚川‐静岡構造線の古傷は、現在は左横ずれの活断層として再活動していますが、その位置は、とりあえずは地質境界としての糸魚川‐静岡構造線の位置との関係を関連付けないで見た方が良いと思います。

 なお横ずれ断層でも、右横ずれと左横ずれでは大小のスケールで副次的な構造が異なります。断層の浅部では小断層が大局的なずれ方向に斜交して配列(雁行配列)します。その並び方が断層の走向方向に見たときに左横ずれではカタカナの「ミ型」、右横ずれでは漢字の杉の字のつくりの「杉型」に配列します(添付図)。

 これは露頭スケールでも地形のスケールでも観察できます。諏訪地域の糸魚川‐静岡構造線活断層帯(活断層としての糸魚川‐静岡構造線)は、東西圧縮を受けて左横ずれにずれていますが、添付図でプレッシャーリッジと書いてあるのは、その副次的な構造で押し上げられてできる小規模な丘の地形(断層変位丘陵)です。
 茅野市金沢~富士見町では、これが顕著に見られ、中央東線付近と南アルプス山麓付近にある2本の平行な主断層の間に、北西‐南東方向に多数の断層変位丘陵が並んでいます。

 富士見町で断層変位丘陵が顕著なのは、もとの糸魚川‐静岡構造線の屈曲により、左横ずれによる圧縮場になっているからです。諏訪盆地が引っ張りによる沈降盆地(プルアパート盆地)になっているのと対照的です。

 次のリンクをご覧ください。
http://jgs-chubu.org/wp-content/uploads/2018/07/s2911.pdf

 「リーデル剪断帯」というのが、主断層の方向に雁行する小断層群のことです。

 図3の「横ずれ断層のジョグ」というのが、もとの断層の屈曲のことで、図3の奥の Pull-apart basin が諏訪盆地、手前の Contractional duplex が富士見の雁行変位丘陵群にあたります。
 
 

RE:トランス・サイエンス展示アンケート報告書の送付について

 投稿者:博物館スタッフ  投稿日:2020年 4月11日(土)12時36分17秒
  小笠原様
大変お手数ですが、博物館ホームぺージの「問い合わせ」の方に、連絡いただけますか?文書添付可能なアドレスをお知らせします。
https://mtl-muse.com/contact/

https://mtl-muse.com/

 

中央構造線の断層面について

 投稿者:戸嶋 清房  投稿日:2020年 4月 9日(木)09時10分50秒
  私は、長野県内の中央構造線の露頭を見て回ったのですが、御教授頂きたいことがあります。日本列島で中央構造線の南側はイザナギプレートの北上に引きずられる形、左横ズレによって形成されたとされています。しかし、現在は右横ズレに変わっています。露頭をみますと、糸静構造線(左横ズレ)よりも複雑に観えます。安康露頭は多層になっており、溝口露頭にはマグマの貫入痕もあります。このような複雑さは、同じ断層面を左横ズレや右横ズレで動いたことに起因するのでしょうか?宜しくお願いします。
 

トランス・サイエンス展示アンケート報告書の送付について

 投稿者:小笠原喜康  投稿日:2020年 3月29日(日)06時34分22秒
  日本大学文理学部の小笠原喜康と申します。
昨年度お願いしたトランスサイエンス展示の報告書をメール添付にてお送りしたいのですが、うまくお送りすることができませんでした。
もし可能でしたら、文書添付可能なアドレスをお教えいただけないでしょうか。
よろしくお願いいたします。
 

河本さんの持論に賛同します!

 投稿者:戸嶋 清房  投稿日:2019年11月29日(金)22時24分52秒
  中央構造線の成り立ちを考えますと、左横ズレで北上してきたズレ面ですから、他の構造線に比べると突出して深いと思っています。伊那山地側にはマイロナイトが見られます。これだって嘗ては地下10キロ以上深い部分で引き伸ばされたものですが、今では地表に露出しています。これからも、他の構造線とは違っていると思います。ただ、諏訪湖付近で糸静構造線で切られていますから、糸静構造線も左横ズレの同等の深いズレ面であると認識しています。今月、櫛形山(池の茶屋登山口)から南アルプスを眺望しました。この下を糸静構造線が走っていて、南アルプスの向こう側を中央構造線が走っていると思うと、『円井断層』や『市之瀬断層』を糸静構造線から切り離して、『甲府盆地西縁断層群』と命名した方が実態に合致していますし、混乱しないと思います。糸静構造線をフォッサマグナの西縁と定義するなら、絶対にこうするべきだと思います。貴重な書き込み、誠に有難う御座いました。  

断層(剪断帯)の深さ

 投稿者:河本  投稿日:2019年11月27日(水)15時19分27秒
編集済
   一般的には「構造線」の意味は、「地質単元の境界(地学事典)」ですが地質単元のスケールについての定義はなく、研究者がいろいろなスケールの断層について勝手に命名しています。したがって、深さについてもいろいろなスケールがあるかもしれません。

 しかし、漠然としたイメージでいえば、大規模なものならば、大陸(日本列島を含む)の地殻内の断層なら、それがずれ動いていた時代には、地下の震源領域(地震波を発生する領域)から地表へ連続していたと思います。その下限は高温の火山地帯では浅く、非火山地帯では深いですが、おおむね20km~15km程度です。

 震源領域より深い領域(地震学的下部地殻)では、高温のため、断層のずれを受けた領域(断層帯あるいは剪断帯)では延性変形によりマイロナイトが造られます。ゆっくりとした延性変形では地震波は発生しません。
 中央構造線沿いでは中生代白亜紀に当時の震源領域よりやや下で形成された、花崗岩類が延性変形を受けたマイロナイトが、その後の上昇と削剥により現在の地表に見られますので、白亜紀当時には少なくとも震源領域の下限より下まで断層(剪断帯)があったと考えられます。
 日高山地西縁は、かつてはユーラシア(アムール)プレート側と、北アメリカ(オホーツク)プレート側の千島弧の衝突境界だったのですが、当時の下部地殻のはんれい岩やマントルのかんらん岩がマイロナイト化したものが、その後の上昇と削剥により地表に見られますので、当時の断層はマントル上端の深さにまで達していたと考えられます。

 地質境界としての構造線については、ここで考えている下端の深さは、あくまでその当時の深さです。それを上昇削剥により現在の地表に露出している断層岩から推定したものです。
 その後の再活動により、再び、深部に断層岩が形成されているかもしれませんが、それは今のところ、想像するしかありません。

 早川の地質境界としての糸魚川-静岡構造線は、もし櫛形地塊が、北上し始めたフィリピン海プレート上の伊豆-小笠原島弧の北端にあって本州に衝突したのだとしたら、当時のプレート境界になりますから、その境界断層はマントルにまで達していたはずです。しかし櫛形と御坂については、本州側だったという考えもあります。

 活断層の定義は「最近の時代に繰り返しずれ動いた断層で、将来に再びずれ動いて地震を発生する断層」です。「地震を発生する」に注目するなら、地下5km~15kmの震源域に達していることが定義に含まれていることになります。
 つまり、地表における地震動(揺れ)によって地すべりなどの地盤変状が生じることがありますが、それによって地面に食い違いが生じても、それだけでは活断層とは呼べないということになります。

 活断層である下円井断層や市之瀬断層は、西側の、櫛形山を含む現在の地形としての南アルプス側が東側の甲府盆地川に押しかぶさる逆断層ですね。構造探査で、その断層面は低角西傾斜ですが、早川の直下まで達しているかどうかまでは確かめられていません。

 地質境界としての糸魚川-静岡構造線と、これらの活断層群は、10kmも離れていますから、「糸魚川-静岡構造線」という名前は混乱のもとになっていると私は思います。むしろ「甲府盆地西縁断層群」のほうが実態に合っていると思います。 
 

有難う御座いました!

 投稿者:戸嶋 清房  投稿日:2019年11月24日(日)21時35分6秒
  細部に渡る説明、身に余る光栄です。糸静構造線沿いの露頭は逆断層が多く、東側が西側に乗り上げている様になっております。国界橋近くの『押し被せ断層』、円井の逆断層、新倉の逆断層等がありますが、地下深くでは一つの構造線に帰着すると想像しています。もしかしたら、活断層は、その深さまで達していないものもあるのではないかと個人的に思っています。一般に、何々構造線と言われていますが、どの程度の深さまでを反映しているのか、大変興味深く思っています。河本様の見解、大変有難く拝読しました。今後とも、宜しくお願いします。  

地質境界と活断層のちがい

 投稿者:河本  投稿日:2019年11月22日(金)16時31分17秒
   もし「地質境界としての中央構造線」の位置と、「活断層としての中央構造線」の位置が一致しないということでしたら、それはその通りです。時代もずれ方も違いますから。

 たとえば四国の地質境界としての中央構造線は地表では和泉層群(深部では領家変成岩・花崗岩)と三波川変成岩の境界で、断層面は中角北傾斜です。新第三紀には内帯側が押しかぶさる逆断層でした。一方、活断層としての中央構造線の断層面はほぼ垂直で右横ずれです。震源の深さは10km程度で、そこから中角北傾斜の断層面(地質境界)と垂直な断層面(活断層)で地表へ向かえば、地表面の断層線の位置はかなり離れるはずです。最も離れている愛媛県西部では互いに6km離れて併走しています。

 お近くの糸魚川―静岡構造線でも、早川に露出する地質境界(ほぼ垂直)と、甲府盆地西縁(櫛形山東縁)に露出する活断層(低角西傾斜)とは10km離れています。

 なお、中央構造線も糸魚川―静岡構造線も、地質境界を見るときにはグーグルマップではなく、シームレス地質図を見るのが良い(地質図でなければ地質境界は分からない)と思います。
 

活断層の位置

 投稿者:河本  投稿日:2019年11月22日(金)15時20分19秒
   精度と解釈の両方と思います。産総研の活断層データベースは、活断層研究会(1991)新編日本の活断層がベースになっているように見えますが、『新編日本の活断層』のマップは20万分の1で、マップ上の断層線は0.5mm幅の線で示されていますので、もともと幅170m程度の精度しかありません。
 活断層の認定はまず変位地形の抽出から始まることが多いのですが、地形は侵食や埋積で変化するので、この程度の精度で抽出しても、より高精度の地図には表せなくなることが多いと思います。
 また掘削して地層を調べられる場所は極めて限られますし、仮に地層の変位を確認できたとしても、副断層を含めたすべての変位がその地点だけに表れているとは言い切れません。じっさい白馬・小谷の地震(長野県神城断層地震)では、2万5000分の1の都市圏活断層図に描かれていた活断層の位置と、地表に現れた変位の位置は、必ずしも一致しませんでした。
 地形や地層の判読も、研究者による解釈ですから、研究者によって活断層を認定する位置が異なったり、活動度の解釈が異なったり、さらに活断層か否かの解釈が異なることもあります。
 したがって高縮尺のマップに書かれている活断層の位置も、そこを離れればくいちがいは生じないとは考えず、(いずれにせよ強い揺れは来ますが)、その付近に食い違いが表れるかもしれない目安と考えるのが良いと思います。
 

中央構造線と活断層線について

 投稿者:戸嶋 清房  投稿日:2019年11月20日(水)22時19分45秒
  中央構造線のルートはグーグルマップとかで確認できます。活断層については、産総研の活断層データベースから確認できます。この両者を重ね合わせますと、必ずしも一致しておらず、微妙に差異を感じます。露頭では断層線は目で確認できますが、私には微妙に差異が感じられます。これは表示精度の問題なのでしょうか?それとも、必ずしも一致しない理由があるのでしょうか?私は地質の素人ですから、あまり声高に聞けれません。大変素朴な質問ですが、御教授をお願いします。  

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