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富士見山の岩石の起源と、現在の隆起

 投稿者:河本  投稿日:2018年11月18日(日)15時37分44秒
   戸嶋さま。たいへん遅くなって申し訳ありません。添付の画像は身延山奥之院から富士見山を見たものです。赤矢印で両端を示した、山麓扇状地の上縁を結ぶ線の付近が活断層である「富士見山断層」です。

 岩石の成因と、現在の地殻変動は別のものですから、まず地形について。

 現在の大地形としての隆起ブロックである赤石地塊の東縁は、甘利山-櫛形山-富士見山の東縁の活断層群です。櫛形山東縁の市ノ瀬断層を東西に横切る深部構造探査では、市ノ瀬断層は低角で、櫛形山の下へ伸びています。震源になる深さ10km付近では早川付近の下に達し、「地質境界としての糸魚川-静岡構造線」と一体になると考えられます。そこで、この赤石地塊東縁の活断層を「活断層としての糸魚川-静岡構造線」といいます。ただし、国の地震本部では「活」の字を使わず「糸魚川-静岡構造線断層帯」と呼んでいるので、まぎらわしいです。地震本部のホームページの「糸魚川-静岡構造線断層帯」の評価の図2-4の南部区間の図をごらんください。
https://www.jishin.go.jp/main/chousa/katsudansou_pdf/41_42_44_itoigawa-shizuoka_2.pdf

 地震本部の「(活断層としての)糸魚川-静岡構造線断層帯」の南端は富士見山断層としていますが、『新編日本の活断層(1991)』には、身延町南方の富士川本流より3~4km西方の門野付近の大城川の河岸に見られた「身延衝上断層」の露頭の写真が掲載されています。

 地形としての甘利山-櫛形山-富士見山-身延山は、基本的には東縁の「(活断層としての)糸魚川-静岡構造線断層帯」の逆断層で上昇する赤石傾動隆起地塊の東辺部で、西側の「地質境界としての糸魚川-静岡構造線」を早川と春木川が下刻することによって、東側の隆起準平原面が残ったものと思います。

 赤石山脈主稜線から伊那谷にかけては接峰面(侵食され残った尾根を基準に谷を埋めて作る仮想的な面)を作ると、かつての平原の面が東側ほど上昇して傾いている様子が復元できます。しかし白根三山~白根南嶺の標高に比べ、甘利山-櫛形山-富士見山-身延山の稜線の標高はずっと低いので、かつての平原の面は東に向かって撓んでいるように見えます。白根三山~白根南嶺と「(活断層としての)糸魚川-静岡構造線断層帯」の間の地域には、未解明の変形があるかもしれません。

 次に、富士見山の材料になっている岩石についてですが、私は富士見山に上ったことがありません。シームレス地質図を見ると、南北方向に延びる新第三紀中新世の約1600万年前~約1200万年前の海成の砂岩泥岩互層、海底に噴出した玄武岩、海成の泥岩、海底に噴出した玄武岩が、山頂から東側の山麓に向かって並んでいます。これらの玄武岩が、かつての伊豆-小笠原島弧の海底火山噴出物だとすると、堆積岩は衝突時の海溝や海峡の堆積物と想像します。あくまで想像ですが。
 なお、火山噴出物の角礫からなる礫岩の場合、日本列島に衝突する以前に、火山島の斜面が海底に向かって崩れ落ちてできた場合も考えられます。

 以前、櫛形山に登った時には、安山岩と玄武岩の溶岩しか見えなかったのですが、富士見山には海溝や海峡に日本列島側から流れ込んだ砂と泥の堆積物も分布しているのかもしれませんね。
 いずれにせよ、現在の地形としての富士見山が隆起し始めたのはずっと後のことです。
 
 

富士見山断層

 投稿者:河本  投稿日:2018年11月17日(土)15時29分49秒
編集済
  「(活断層としての)糸魚川-静岡構造線断層帯」富士見山断層。
 身延山奥之院から2013年3月5日撮影
 

学芸員の説明力に感激

 投稿者:村上孝之  投稿日:2018年10月20日(土)07時16分24秒
  2018/10/19訪問しました。(静岡県西部です)
事前に電話で学芸員の出勤を確認し当日は午後だけという処をわざわざ午前も出ていただけるという返事を頂いて訪問。
当日、10時前に松川から車で行き、まず念願の中央構造線のポスターを3枚購入。直ぐに学芸員さんが来られて説明を受けた。学芸員さんは河本和朗さんと仰る方。河本さんの説明が素晴らしい!
私の知識は60年程前の中学高校生時代の知識だけなので随分誤解が多いらしい。度々質問をする毎に「あ、それ間違ってます」という指摘が飛んで来る。私が「プレートの移動エネルギーは海嶺から噴き出す力と思ってました」と言えば、河本さんは「それ誤解です、噴き出す側の力ではなく、沈み込む側の収縮する力です」と優しく教えて頂いた。イヤー教え方も素晴らしい、親切丁寧だから叱られたという気がしない。一つ一つが知る喜びで嬉しくなるような興奮を味わった。
30年程前、仕事で東大名誉教授の竹内均様と1時間程お話を聞く機会が有ったがその時以上の興奮を覚えました。ありがとうございました。
 

感想

 投稿者:りょう  投稿日:2018年 9月 4日(火)14時44分46秒
  8月11日の土曜日に埼玉から家族で見学させて頂いた者です。
学芸員さんの丁寧な説明を聞かせてもらい、勉強になったと言うより大変楽しめました。
長野県だけでなく日本全体の説明も沢山して頂いて楽しかったです。
岩槻のボーリングの話の時に、以前行ったつくば市の地質標本館に展示してあった物が説明の物だったのか等少しずつ繋がってきて説明を聞いていてとても楽しかったです。

残念なことは、埼玉からは遠いって事でしょうか。
でも、機会を作ってまた説明を聞きに行きたいです。
 

身延山塊の生い立ちについて

 投稿者:戸嶋 清房  投稿日:2018年 8月15日(水)19時28分33秒
  河本様に御教授頂きたいことがあります。
私は、身延山に拝登し展望台より北方の眺望に大変感動して帰って参りました。遥か遠くに櫛形山、眼前には早川を隔てて富士見山が眺望できます。調べてみますと、櫛形山は遥か昔、フィリピン海プレートの乗っかってきた火山島であることが書かれておりました。糸静構造線は早川沿いにきて、途中から春木川に沿っております。身延山と七面山の間を通っております。身延山からは、この糸静構造線のルートを確認することができます。そこで、御教授願いたいことが出てまいりました。この糸静構造線の東側に位置する山塊、すなわち、櫛形山から富士見山に連なる山塊、また身延山自身はどの様な生い立ちで形成されたのでしょうか?今月13日、富士見山へ登ってきましたが、早川に並行するように尾根が続いておりました。この尾根は御殿山、源氏山へと続き、櫛形山に至っております。また、富士見山への登山道の途中に深いガレ場がありましたが、礫岩っぽい感じで崩れやすい状態に見受けられました。多分、火山岩ではないと思います。これらの山塊の生い立ちに非常に興味をそそられました。中央構造線には関係しないのですが、是非とも御教授をお願い致します。
 

8/10の行きます

 投稿者:浜松の老人  投稿日:2018年 8月 3日(金)22時09分48秒
  8/9に当地(静岡県磐田市)を出て、松川で泊り、翌日中央構造線博物館を訪問したいと思っております。学芸員の方がお見えであればいいなと期待しております。
数年前まではバイクで神楽の湯によく行っておりましたが、70歳でバイクは卒業しました。今回は妻と果物買い出しドライブを兼ねて伺います。
 

大岩(石灰岩)のいわれ

 投稿者:戸嶋 清房  投稿日:2018年 5月30日(水)19時47分48秒
  『先能露頭』の説明版には根拠になる説明は記されておりませんでした。ですが、河本様からの御回答を賜り、個人的に非常に納得しました。心に溜まっていたモヤモヤが晴れました、有難うございました。このところ、秩父三十四箇所の観音巡礼を始めました。山梨県側から雁坂トンネルを抜けて行きましたが、谷の深さに驚くとともに肝を冷やしながら秩父に辿り着きました。地質的に非常に興味を掻き立てられました。関東がまだ海の底だったころを彷彿とさせる礫岩層が目に留まり、悠久の時の流れに浸ってきました。『ジオパーク』とありましたし、地質的に特異な場所があるかと思います。河野様が『ここは』と思う場所がありましたら、是非紹介して下さい。宜しくお願いします。  

石灰岩の大岩と県境

 投稿者:河本  投稿日:2018年 5月26日(土)11時31分35秒
  戸嶋さま。「大岩(石灰岩)がありますが、これは元々長野県側にあったもので、地殻変動で山梨県側に移動した」と説明版にあるということですが、なにか根拠になる文献があるのでしょうか。
 糸魚川‐静岡構造線活断層系が地表に食い違いを残すほど大きく動いた最新の年代は、おそらく西暦762年(奈良時代)です。奈良時代には長野県も山梨県もありませんが、当時の甲斐の国と信濃の国の境界はどこにあったのでしょう。
 仮に今のように釜無川の流路が国境だったとして、大岩が左岸側にあった(大岩の南東側に旧釜無川が流れていた)とします。大岩の南西側の断層が右ずれに動き、旧釜無川の出口をふさぎ、釜無川が大岩の南西側の断層沿いに新しい流路を作って大岩の西側を回り込むように流れを変えたとすれば、「大岩が信濃から甲斐へ(釜無川の流路が大岩の南東側から北西側へ)」というストーリーが成り立つかもしれません。
 しかしこれは2つの難点があります。まず大岩の南東側にわずか1250年前に釜無川が流れていた地形が見られない(赤石山地側の隆起速度(1000年に数メートル)を考えても、現河床ととそれほど変わらない高さに旧河道跡が残っているはず)。
 また諏訪~白州の糸魚川‐静岡構造線活断層系は大局的に左横ずれであることから、右ずれの大きな変位は考えにくいと思います。糸魚川‐静岡構造線活断層系による中央構造線の食い違いは茅野~岡谷の12kmですので、仏像構造線も先能~青柳あたりまで食い違っていてもおかしくないと思います。秩父帯の延長は原村の下あたりにあるかもしれませんね。八ヶ岳を取り除き、さらにおそらく存在している北部フォッサマグナの地層を取り除かないと見えないですが。
 シームレス地質図を見ると、仏像構造線(秩父帯=ジュラ紀付加体と四万十帯北帯=白亜紀付加体の境界断層)は小海線海尻駅付近で露出し、関東山地内を東京の五日市へたどれます。

 赤石山地内の釜無川は仏像構造線の破砕岩を掘り下げて流れていますが、厳密には断層の位置と完全には一致しません。川も多少は蛇行するし、断層面も垂直とは限らず、走向も微妙に変化しているし。釜無川の流路が現在の県境になっているのは人間の都合による線引きです。
 地球の時間スケールと人間の時間スケールには大きなちがいがあるので、150年程度の歴史しかない長野県側か山梨県側かという話は、あまり意味がないように思います。
 それに、信濃と甲斐の境は、信玄のころに変わったというようなことを聞いた覚えがあるのですが、いかがですか?
 
 

糸静構造線・先能露頭について

 投稿者:戸嶋 清房  投稿日:2018年 5月16日(水)21時43分39秒
  河本様、『白鳳峠の岩海』『高座岩の礫岩』『岡谷の横河川上流の結晶片岩 』についてのご回答、大変興味深く読ませて頂きました。私は深く調べる手立てを知りませんので、ご回答を読むたびに引き込まれる思いが致します。この連休に地元の糸静構造線・先能露頭に立ち寄りました。かなり前になりますが、河本様に画像を紹介させて頂きました。南アルプスジオパークの地図に記載されているものの、以前は現地に何の表示もありませんでした。今は説明版が設置されておりました。説明板の末尾に『南アルプスジオパーク・富士見町』と書かれておりました。現地から釜無川を挟んで、山梨県側(対岸)に大岩(石灰岩)がありますが、これは元々長野県側にあったもので、地殻変動で山梨県側に移動したと説明板に記載されておりました。私は、糸静構造線は左横ズレ断層と理解しております。中央構造線が、杖突峠から岡谷の横河川にズレでいることを考慮しますと、こう考えざるを得ません。そうしますと、長野県側にあった大岩が山梨県側に動いたのは、糸静構造線に関わる地殻変動ではなかったと考えざるを得ません。河本様なら詳細を御存じと思いまして投稿させて頂きました。宜しくお願いします。
 

伊那山地の範囲について

 投稿者:河本  投稿日:2018年 3月31日(土)16時47分6秒
編集済
   山地の名称や範囲に、きまりがあるのかどうか。伊那山地は、私の感覚では、伊那谷と、中央構造線が侵食されている谷の間の山地という感じです。ですので、ご指摘の範囲でよいと思いますが、静岡県内の部分は地元の人はどのように呼ばれるのでしょうか。観音山までは長野県飯田市や下伊那郡内や郡境ですが、遠州の人たちは「伊那」と呼ぶのは納得しないかもしれませんね。
 なお、伊那谷の人たちの中には「伊那山脈」「赤石山地」と呼ぶ人もいます。山地は山が集まりひとつにまとまっている地域、山脈は列が連なってひとつづきに連なっているものというイメージでいえば、赤石山地は、主稜線・白根三山-白根南嶺・甲斐駒-鳳凰三山という3列の山脈が集まった山地。伊那山地は幅狭い山脈というのもうなづけます。
 一方では教科書で山脈はロッキー山脈・アンデス山脈・ヒマラヤ山脈・アルプス山脈といった大山脈に使われ、山地というとやや低い小規模なものといった感じもあります。
 じっさいのところ、これという決まった呼び方はないのですね。ただし、10年ほど前に山地と山脈の使い分けについて学校教材の地図帳を出版している帝国書院に問い合わせたところ、以前に国土地理院と文部省が山地の名についてすりあわせを行い、それに準拠しているということでした。帝国書院の地図帳では、山脈は飛騨・木曽・赤石・日高・鈴鹿・讃岐に使われていたと思います。でもなぜ讃岐が山地ではなく山脈なのかということは「慣例」という以上の答えはありませんでした。
 帝国書院の地図帳では「伊那山地」で、学校教育ではそれが使われています。赤石山脈については、地質や地理の論文では赤石山地のほうが多いようです。
 
 

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