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活断層のずれによるトンネルの食い違い

 投稿者:河本  投稿日:2021年 3月 2日(火)19時10分7秒
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  1.活断層とは「最近の時代にくりかえしずれ動き、近い将来にもずれ動いて地震を発生する断層」と定義されています。
 断層がずれ動くことで地震が発生するのですから「地震を発生する断層」は余分な気がしますが、地滑りなどによる地面のずれと区別するためでしょうか。
 ここで「最近の時代」とはいつからでしょうか。逆に「最近ではない時代にずれ動いた断層」とは「過去の(現在は終了した)地殻変動によってずれ動き、最近の(現在進行中の)地殻変動の時代にはずれ動かなくなった断層」ということになります。今の日本列島の山地の隆起や盆地の沈降を起こしている地殻変動が始まったのは、おおむね250万年前です。ただし250万年間でも変動の様子は少しづつ変わっていきますから、最近の数10万年間はずれ動きを生じていないとすれば、「活断層ではなくなった」と言えるかもしれません。

2,活断層と言っても、いつもズルズル動いているわけではありません。ひずみが少しづつ溜まっていき、耐えられなくなって一気に動きます。
 ところで地震の規模(エネルギー)は、ずれ動いた断層の面積やずれ動いた量に比例します。いわゆる内陸直下型という日本列島の地殻で発生する地震の場合、その震源の深さは10㎞程度です。地震の規模を表すマグニチュードが6.0の場合、震源断層の面積は5㎞四方程度ですから、よほど震源が浅い場合でなければ断層面の食い違いは地表には達しません。マグニチュードが7.0の場合、震源断層の面積は20㎞四方以上になるので、その一部が地表に達し、地面の食い違いが生じます。

 活断層を「発見」できるのは、過去に地表に生じた食い違いが残っているからです。したがってその食い違いの痕跡は、そこでマグニチュード7程度かそれ以上の地震が生じたときの痕跡ということになります。
 活断層が繰り返しずれ動いた間隔というのも、地表の食い違いが繰り返し生じた間隔ということですから、マグニチュード7程度かそれ以上の地震が生じた間隔ということになります。その間隔は活断層により異なり、数百年~数万年です。

3,活断層の活動度は、過去のずれ動きの蓄積によって地形が食い違っている量で表します。ふつうは1000年あたりに割った食い違い量で表しますが、1000年間隔でずれ動くというわけではありません。例えば1万年おきに1mずれる活断層ならば、1000年あたりの食い違い量は10㎝になります。
 この1000年あたりの累積食い違い量が1m~10mの場合A級、10㎝~1mの場合B級、1㎝~10㎝の場合C級に、活断層の活動度を区分しています。

4,九州~沖縄を除き、現在の日本列島の地殻には主に東西方向に圧縮する力による短縮変形が生じています。およそ30㎞ほどの厚さの地殻の上半分、厚さ15㎞ていどの上部地殻は、低温で固いため大きくゆっくりと変形することができません。そのため多数の変動地塊(ブロック)に分かれ、それぞれの変動地塊の境界で、一方が他方に押しかぶさったり、互いに横ずれに食い違ったりしていきます。

 したがって、変動地塊どうしの境界に活動度が高い活断層が分布します。変動地塊の内部にも活断層が生じている場合がありますが、地塊の内部の活断層の活動度は低いのがふつうです。

5,南アルプスの変動地塊は、諏訪湖を頂点とし冨士川と天竜川を2辺とする三角形の地塊で西へ傾きながら上昇しているので「赤石傾動地塊」と呼ばれます。
 東縁を限るのはA~B級の糸魚川‐静岡構造線(活)断層帯で、赤石地塊が甲府盆地側に押しかぶさるように上昇しています。
 西縁を限るのはA~B級の伊那谷断層帯で、こちらでは木曽山脈(中央アルプス)の地塊が赤石地塊に押しかぶさっています。
 赤石地塊の内部にある大きな古傷の中央構造線も活断層として再活動していますが、活動度はB~C級です。

6,リニア新幹線と活断層の関係を考えるときには、変動地塊の境界であるA~B級活断層にもっと注目すべきと思います。もちろんC級活断層でも、ひずみが十分にたまってずれ動く時期に達していたら、周囲のA級活断層より先に動きます。
 しかし赤石地塊内部の中央構造線に注目が行き過ぎて、赤石地塊の境界の糸魚川‐静岡構造線(活)断層帯や伊那谷断層帯に注意が向いていないのではないかと感じています。

 リニア新幹線は甲府盆地から赤石山地東部の巨摩山地に入るトンネルの入り口付近で糸魚川‐静岡構造線(活)断層帯を横断します。
 また、天竜川西岸の長野県駅のすぐ西方の中央アルプスに入るトンネルの入り口付近で、伊那谷断層帯の複数の活断層を横断します。
 さらに甲府盆地の南東側では、御坂山地の地塊が甲府盆地に押しかぶさる曽根丘陵断層にほぼ沿っています。

 伊那谷断層帯、糸魚川‐静岡構造線(活)断層帯、曽根丘陵断層のおおまかな位置については下記の政府地震調査研究推進本部のページをごらんください。
https://www.jishin.go.jp/evaluation/long_term_evaluation/major_active_fault/

7,活断層のずれ動きにより生じたトンネルの損傷については、1930年の東海道本線丹那トンネル(建設中)の例がよく知られています。1930年の丹那断層のずれ動きにより北伊豆地震が発生しましたが、震源断層のずれは地表まで達し、地表に知られていた丹那断層に新たな食い違いが生じました。
 それにより地下160mで丹那断層を横断して建設されていたトンネルには2.4mの食い違いが生じました。まだ建設中で列車が通っていなかったのは幸運だったとされています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjseg1960/39/6/39_6_540/_pdf

8,今のところ、鉄道や道路を活断層を横断して建設することを規制するきまりはありません。
 高速鉄道の場合は、強い揺れに対しては工学的にできるだけ対処し、食い違いに対しては地震の揺れを検知すると同時に急停車させるシステムによって食い違いが生じた場所に列車がさしかかる確率をできるだけ下げることで対処しようとしています。鉄道工学では、活断層を横断する部分のトンネルの幅を予想される食い違い量の分まで広げ、断層のずれ動きによって列車の前方に生じた岩壁への激突を避けるようにする研究も行われていますが、実際に食い違いが生じる場所をごく狭い範囲で予測することが困難で、おそらく幅広いトンネルを長区間建設することの技術的・環境的・工費的困難から採用例はありません。

9,理学的には活断層は将来必ずずれ動くものであり、リニア新幹線の供用期間中に食い違いが生じる確率もゼロではないことを想定できます。
しかし万一、走行中の列車が活断層のずれて食い違った部分に500㎞で激突すれば乗客の全員死亡は免れないでしょう。しかし揺れを感知して緊急停止するシステムなどに不備が無ければ鉄道会社の責任は問われないでしょう。巻き込まれた乗客は「不運」とされるのではないでしょうか。

10,私自身はリニア新幹線は不要と考えています。地球の資源・環境に限界が生じる中で、人類が持続するためにはスローダウンと資源の公平な分配が必要です。リニア新幹線はそれに逆行するものと思います。
 
 
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